2015年7月30日木曜日

全国鳥類繁殖分布調査に参加しませんか?

全国繁殖分布調査に神奈川支部は協力します。
以下の調査員が登録されていません。
繁殖期に1回の現地調査ですので是非ご協力お願いします。
以下のHPで登録をして下さい。
http://www.bird-atlas.jp/index.html

宮ヶ瀬湖周辺
真鶴半島
札掛
城ヶ島
檜洞丸




【 概 要 】
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1.◆参加型調査◆ 全国鳥類繁殖分布調査
           調査地の登録がはじまります
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 2016年から5年がかりで実施する全国鳥類繁殖分布調査ですが,来年の調査開始に向けて,調査地登録がはじまります.8月1日に登録サイトがオープンする予定で,サイト上で実際に調査するコースを地図で確認することができます.地図からご自身が調査できそうなコースを選んで,ぜひ調査にご参加ください.

■調査地登録の方法

1.まだ「繁殖分布調査」の参加登録がお済みでない方は,まず調査への参加登録をしてください.
https://db3.bird-research.jp/~birdatlas/volunteer.html

2.登録サイトのオープン(8月1日頃)後,事務局から調査地登録のためのWEBページのURLが送られてきます.

3.お知らせしたWEBページに掲載された地図から,調査コースの位置を知ることができます.その中から調査可能な調査コースを選び,調査地登録をしてください.

調査方法等詳細はこちらをご覧ください.
http://www.bird-atlas.jp/map.html

できるだけ多くの方に調査に参加していただきたいので,同じコースに複数の方から応募があった場合は調整して一緒に調査していただきたいと思います.ご協力よろしくお願いします.

【植田睦之】

2015年7月29日水曜日

記録映画『鳥の道を越えて』お礼上映とトークの集い

 秋になるとおびただしい数が渡ってきていた渡り鳥と、その渡り鳥を生活の糧とするため、 人々の暮らしの中で行われていた鳥猟を取り上げて、2014 年に公開された記録映画「鳥の道を 越えて」は、文化庁映画賞文化記録映画優秀賞、グリーンイメージ国際環境映像祭グリーンイ メージ賞、キネマ旬報ベストテン文化映画部門第1位、科学技術映像祭内閣総理大臣賞などの 賞を受賞しました。
  この映画で取り上げられているカスミ網猟は現在禁止されていますが、カスミ網猟の鳥屋 場(とやば)の中には、渡り鳥の移動や生態を解明するために山階鳥類研究所で行っている調 査の調査地として引き続き活用されている場所があります。そのような中のひとつ、福井県越 前町の調査地で調査を行っている山階鳥類研究所の佐藤文男研究員がこの映画の監修を担当し ました。 そのような背景から、今回、今井友樹監督のご好意で、山階鳥研の地元我孫子市でのお礼 上映が実現する運びとなりました。さらに今回は、監修の佐藤研究員と今井監督によるトーク で、鳥類の生態や環境問題、伝統文化について考えてみたいと思います。 多くの皆様のご参加をお待ちしています。

 ●映画タイトル:「鳥の道を越えて」


 (監督:今井友樹、監修:佐藤文男、製作:工房ギャレット、93 分)

● トーク:今井友樹(映画監督)・佐藤文男(山階鳥類研究所研究員)

●日時:2015(平成 27)年 9 月 26 日(土) 午後 13 時 30 分〜16 時 00 分 (開場 13 時 00 分)

●場所:我孫子市手賀沼親水広場・水の館 3 階研修室(定員:75 名)
 千葉県我孫子市高野山新田 193

●会場までの交通:JR 常磐線 我孫子駅南口から市役所経由の我孫子市役所下車徒歩 5 分。


●参加費:無料(事前の申込みは要りません・先着順)

●主催・問い合わせ:我孫子市鳥の博物館(電話 04-7185-2212)
 (公財)山階鳥類研究所(広報担当 平岡考 電話 04-7182-1101  e-mail: koho★yamashna.or.jp)
*e-mailは ★を@に変更して送信して下さい。

2015年7月26日日曜日

次世代に残したい神奈川の自然(5)


寒川町のサギ類のコロニー


新倉 三佐雄



 表紙の写真中央部にある樹林が、サギ類のコロニーに利用されている屋敷林です。今回は、次世代に残したかったが、そのままの形では残すことができなかった自然についてです。

<環境>
 寒川町のサギ類のコロニーは、神奈川県のほぼ中央部を北から南に向かって流れる相模川の下流域の平野部にあり、支流にあたる目久尻川の旧流路沿いに形成されます。
 形成される場所は、屋敷林の北側の一部で、面積は、年によって拡大、縮小するため異なりますが、1994年当時は0.4haでした。
 サギ類が集団で繁殖するためには、周辺に雛たちを養うのに十分なエサを確保できる広い水辺環境が必要になります。寒川町のこのコロニー周辺には、相模川や目久尻川流域の水辺環境があります。

<いつから>
 この屋敷林にコロニーが形成されるようになった時期については、地元の方からの聞き取りでは、1980~1981年頃とのことでした。それ以前は、高座郡寒川町宮山の寒川神社の社寺林にコロニーがあり、そこから当地へ移ってきたとのことでした。その後およそ35年間にわたり維持されてきたことになります。

<経緯>
 1980年ごろから平穏にサギたちが繁殖してきたこのコロニーですが、2002年にコロニーに影響する形で道路計画があることがわかりました。2002年から2003年にかけて寒川町により懇談会が開催され、支部としても参加し意見を述べました。その結果、懇談会として「道路の地下化等構造による対応」や「コロニー部分の公有地化」などの意見もまとめられました。
 その後も継続して、意見の具体化等の検討する場を設けるよう町に要望して来ましたが、具体的な動きもなく、2012年になり、突然コロニーの直近を通る形での道路計画案が町より示されました。
2012年以降の動きにつきましては、支部報で既に報告されている部分もありますが、支部として、寒川町長あてのコロニー保全の要望書、町都市計画審議会への道路計画案反対の意見書の提出を行いました。
 再度の懇談会も2012年~2013年に開催されましたが、主たるメンバーの学識経験者の方の「高速道路のインターチェンジにコロニーを誘致したこともある」という意見などもあり、結局、幅25mの4車線の道路が、コロニーの直近を通る形で都市計画決定がなされました(写真の樹林を東西(左右)方向に横断する形になります)。

<県内のコロニーの状況>
 支部報で呼びかけ、記録・情報をいただきました県内のコロニーの様子ですが、これまで分かった範囲では、複数種によるコロニーは、小田原市と寒川町のこのコロニーのみの状況になっています。特にコサギとアマサギの繁殖が確認されたのは、寒川町のこのコロニーだけでした。

<将来に向けて>
 コロニーの範囲について、町の委託を受けた調査会社が2014年に行った古巣の分布状況の調査結果では、1994年当時に比べてコロニーの範囲が大幅に縮小されているのが分かりました。
 コロニーのあるところは、現在民有地であり、周辺は新幹線新駅に関連して、環境共生都市の名のもとに開発が計画されつつあるところです。このままではコロニーの将来がたいへん危惧されるところです。いつまでも、繁殖期にコサギやアマサギを県内で見られるよう、貴重なサギ類のコロニーのある環境を残したいものです。

2015年7月18日土曜日

講演と音楽「世界の自然と自然、人と人をつなぐ渡り鳥」


 9月に講演と音楽のつどい「世界の自然と自然、人と人をつなぐ渡り鳥」が
開かれることになりました。
この催しでは、鳥の渡りをテーマに、天の川を渡る鳥の夢の世界から、南北朝鮮の離散家族をつないだ鳥の実話、衛星を利用した最新の研究から明らかになったことがらまで、多様な話題が登場します。また、それぞれの話題の合い間には、かかわりのある美しい調べの音楽が挿入されます。
参加された方は、壮大な鳥の渡りへの理解を深めつつ、感動に満ちた時をすごすことになるに違いありません。

催しの概要は、下記の通りです。
詳細は添付のチラシや企画書に記述してあります。
友人やお知り合いの方々お誘いのうえ、ご参加いただければ幸いです。
なお、ご参加には申し込みが必要です。ご注意ください。

●日時: 2015年9月13日(日) 午後12時30分開場、
      1時00分開始、5時00分終了

●会場:東京大学弥生講堂一条ホール(300席)
     http://www.a.u-tokyo.ac.jp/yayoi/


●演題と音楽
★此岸と彼岸をつなぐ渡り鳥
 ―宮沢賢治「銀河鉄道の夜」の世界―
 杉浦嘉雄(日本文理大学教授)
  歌:「星めぐりの歌」(作詞作曲・宮沢賢治) 
   山口由里子(ソプラノ)、鍋嶋 芳(ヴァイオリン)、
   富樫亜紀(チェロ)
   
★北と南の離散家族をつないだ渡り鳥
 ―アリランの青い鳥、シベリアムクドリをめぐる物語―
 遠藤公男(児童文学者)
  歌:「アリラン」(朝鮮半島民謡)
   山口由里子(ソプラノ)、鍋嶋 芳(ヴァイオリン)、
   富樫亜紀(チェロ)

★世界の自然と自然、人と人をつなぐ渡り鳥
 ―渡り鳥の衛星追跡研究の成果から―
 樋口広芳(東京大学名誉教授、慶應義塾大学特任教授)
  渡り鳥のスライドと音楽(バッハ:G線上のアリア、弦楽演奏)
   鍋島 芳(ヴァイオリン)、富樫亜紀(チェロ)

●参加費: 1,000円(当日、受付にて支払い)。

●申し込み:参加希望者は名前(複数可)と連絡先を電子メール、
 電話またはファックスで以下に連絡。先着300名まで。
      電子メールwataridori.office@gmail.com
      電話090-4711-9892、FAX:046-267-4591

●以下のサイトから,チラシが見られます。
https://drive.google.com/file/d/0B5t2N6HkmTasV3FERkNHR0ZwOUU/view



平成27年度神奈川県野生動物リハビリテーター(2級)の募集


平成27年度神奈川県野生動物リハビリテーター(2級)募集要項

 WRV神奈川支部は、傷ついた野生動物を救護し、野生復帰させる活動を行いながら、自然のしくみを理解し、野生動物の声を代弁する役割の担い手を養成するために、野生動物リハビリテーター制度を創設しました。
平成17年度から実施してしますが、今年度も、まず基礎的な共通知識を持って
いただくために、2級野生動物リハビリテーターを募集します。

後援予定:神奈川県、(公社)神奈川県獣医師会、(公社)横浜獣医師会、(公社)川崎市獣医師会

1.募集期間:平成27年7月17日(金)~8月17日(月)(必着)

2.応募対象者:
①神奈川県在住で、18歳以上の方(平成28年4月1日までに満18歳)
②野生動物の保護に関心があり、下記の講習会及び実践活動に全日程受講可能な方

3.募集人員:20人(応募多数の場合は抽選)

4.リハビリテーター(2級)の活動内容:
①傷ついた野生動物の収容、一時看護、救護施設への搬送を行います
②自宅等で看護から野生復帰までの一連の救護活動を行います(指定野鳥種のみ)
③救護施設において、救護動物の世話や野生復帰訓練などを行います
④救護原因の究明やその対策など、生息地の保全に資する活動を行います
⑤情報交換やレベルアップを図る活動を行います

5.応募方法: リハビリテーター養成講座申込書にご記入の上、郵送にて提出
してください

申込書は、HPよりダウンロードするか、e-mailでタイトルに「リハビリテーター養成講座申込書希望」、通信欄に郵便番号、住所、氏名を明記の上、ご請求ください

6.認定までの流れ:
①講習会(2日間:簡単な試験を含む)受講料10,000円+テキスト資料代3,000円
日時:平成27年9月26・27日(土・日)両日10:00~16:30
会場:かながわ県民活動サポートセンター コラボスタジオ(かながわ県民セン
ター11階)
②実践活動(実習)(3日間)全日10:00~16:00
日時:実習候補日(1日目:10月4,10,11,12日)、(2日目:11月7,8,14,15日)、(3日目:12月5,6,12,13日)
事前の希望調書をもとに参加人数を調整のうえ、講習会初日に実習日を通知する
会場:野生動物ボランティアセンター
③認定申請(認定を希望する場合) 認定料2,000円
2級リハビリテーター認定申請書及び小論文を提出(期限:平成27年12月31日)
ただし、認定にあたっては別に定める6つの要件をすべて満たすこと
④認定(平成28年2月予定)

7.留意事項:
①活動に伴う経費(餌代や搬送時の交通費等)は、自己負担となります
②2年に1度の更新手続きが必要となります 更新料2,000円

 ●応募・問合せ先
特定非営利活動法人野生動物救護獣医師協会神奈川支部(WRV神奈川支部)
〒211-0042川崎市中原区下新城2-1-28野生動物ボランティアセンター内
TEL:044-777-8243 FAX:044-777-8368
e-mail:kanagawaアットマークwrvj.org  http://www.wrv-kanagawa.jp/

見つけて、夏のジョウビタキ!

 日本では本来冬にしか見られないジョウビタキですが、ここ数年にわたる調査の結果、渡らずに、長野県と山梨県にまたがる八ヶ岳周辺で、継続的に繁殖していることが判明し、今後繁殖地域の拡大が予想されます。見つかった巣はすべてリゾート地や別荘地の建物などの人工物に造られていました。
 この夏も元気なヒナが巣立っています。ヒナの体は斑模様ですが、尾は短くて
もオレンジ色で、翼の白い斑も見えます。皆さんの周囲にも「ジッ、ジッ」と鳴
いて餌をねだっているヒナの姿が見られるかもしれません。家の周辺で餌をくわ
えた親鳥を見かけるかもしれません。高い樹の天辺などで囀る雄の声が聞かれる
かもしれません。
 今後、八ヶ岳周辺以外にも繁殖地が拡大する可能性があります。皆さまと一緒
に変化を追跡したいと考えております。



 夏のジョウビタキを見かけたら、ぜひ当会の「見つけて渡り鳥」への投稿をお願い致します。

可愛いジョウビタキの雛の写真は、日本野鳥の会諏訪のHPで見ることが出来ます。
http://homepage2.nifty.com/wbsuwa/redstart.html

(日本野鳥の会諏訪 林正敏・山路公紀)

全国都市緑化フェアに対して要望書を提出

2015年7月17日

日本野鳥の会神奈川支部
支部長 鈴木茂也


横浜市長 林 文子様

        全国都市緑化フェアの里山ガーデンの計画変更について(要望)


   拝啓 日頃から市内の生物多様性を守り育てる施策を推進されていることについて、感謝しております。
  さて、貴市は2017年3月~6月に、「全国都市緑化フェア」を開催されると聞き及んでおります。貴市が先進的に行ってこられた緑の取組の成果をアピールし、横浜ならではの「美しい花と緑豊かなまち横浜」を発信されるとの趣旨には、小会としても異論はありません。しかし、先日公表された「第33回全国都市緑化よこはまフェア基本計画」を拝見したところ、郊外部会場(里山ガーデン)の会場計画には、以下のように少なからず問題があると考えます。
「郊外部会場/里山ガーデン」とされた横浜動物の森公園の植物公園予定地は、同計画にも書かれている通り、横浜らしい豊かな里山が残る場所で、横浜市で激減してしまった谷戸の生態系が残っている場所です。
しかし具体的な会場整備の計画を見ると、こうした現在の生態系の重要性とは裏腹に、谷戸を埋め立て、園芸種を植える花畑の花壇を創出するイメージが掲げられています。こうした造成は、里山・谷戸の生態系を不可逆的に破壊するもので、基本計画に掲げられた「横浜の森を楽しむ」「横浜の里山の魅力、楽しみ方」「生物多様性の主流化を発信」といったテーマ、サブテーマの実現を不可能にする計画であり、生物多様性保全を目指す横浜市の方針とも大きく異なります。
また、園芸種として植栽され、そのまま山野に広がってしまった外来種も多く見受けられます。このような植物の中には地域の在来種に大きな打撃を与えているものもあります。さらに緑化に使用される植物については在来種の利用を促進させるべきであるとも考えています。
 小会は、こうした問題のある里山ガーデンの会場計画案に反対します。里山ガーデンでは、既存の自然を生かした形での、里山保全再生を目指した計画変更を求めます。

(参考)
 里山ガーデン予定地では、神奈川県レッドデータブック2006で絶滅危惧Ⅱ類であるキンラン、要注意種のアズマヒキガエル、シュレーゲルアオガエル、クツワムシ等の絶滅危惧種が確認されており、未調査な生物についての情報集積が待たれる場所です。鳥類についても、渡り鳥などの生息地として重要な場所です。

2015年7月1日水曜日

次世代に残したい神奈川の自然(4)

酒匂川

(西湘グループ 頼 ウメ子)


 富士山を源とし神奈川県西部を流れる酒匂 川は周辺の田畑を潤し、県内の上水道や工業 用水として利用されながら、足柄平野を流れ る全長46kmの二級河川です。静岡県では鮎 沢川、県内に入ると酒匂川と呼ばれます。この 名の由来は様々ありますが、私のお気に入りは 大 ヤマトタケルノミコト 和武尊が東征に際してお神酒を注いで龍神 に祈念したところ、その匂いがしばらく消えな かったためというものです。お酒が苦手な方は これだけでもふらふらしそうなお話ですね。
 急峻な地形ということもあり、時折恐ろしい 顔を見せ、その都度大量の土砂を運びます。 特に江戸時代の宝永年間の大噴火では大量の 噴火物・スコリア(黒っぽい火山噴出物)が流 れ込み、下流域では多大な被害がありました。 このスコリアは決して過去の遺物ではなく今も 酒匂川を苦しめています。
 鳥類に関しては昔の記録が少なく、詳細は分 かりませんが、江戸時代、将軍にツルの卵を献 上したとの記録がありますから、それから類推し てもかなり自然の豊かな場所だったのでしょう。
  これまでに私達が酒匂川で記録している鳥類 は外来種も加え230種ほどです。比較的水質 も自然環境も良好ですし、周辺には後背湿地(平 野の川の近くにある湿地帯)としての水田が広 がっていますので鳥の種類も多いのでしょう。  
 30年程前からは野鳥の会を中心に詳細な調 査を行っていますので、鳥類目録はかなり充実 しています。その中からお話してみましょう。
  まず越冬のために飛来するカモ類です。1980 年代から急激な増加傾向を見せ、1996年に 2200羽を記録しました。これは1970年代の 飯 泉取水堰の完成に主な原因があると言われ ています。初冬になれば当たり前のようにみら れる酒匂川の風景も決して遠い昔のことではな いのに驚きます。
  ここ20年でダイサギやアオサギ等の大型の 水鳥が増えたことも特徴的なことです。漁協等 の1990年代後半からのアユを含めた放流事業が盛んとなり、増加はその時期と重なります。
 カワアイサが1990年頃から越冬するように なり、次第に河口から上流にまで生息域を広げ、 一時は60羽を超えました。流域の住民も美し い鳥の出現に大きな関心を寄せました。ただ気 がかりは、このような大型水鳥の増加の陰でコ サギが減少していることです。
 酒匂川と言えばコアジサシでしょう。1995 年に市の鳥となり、飛来数の減少に歯止めを かけようと、20年間、営巣地の整備が野鳥の 会と小田原市が中心となり行われました。大雨 や三保ダムの放流によるコロニーの冠水を防 ぐため、かさ上げした人工台地を造る活動で す。参加者は300名を超える事もありました。 しかし人工台地での営巣の確率が低いことや、 コアジサシの営巣地をカラスやチョウゲンボウ が襲う被害が増えた事により、残念ながら飛来 数の増加にはつながりませんでした。昨年から は繁殖後の徹底的な天敵対策を実施する方法 に切り替え、保護活動が続けられています。
 これほど豊かに見えた河川もここ数年一変 しました。ゲリラ豪雨の頻発により土砂が流入 し、毎年その排出が行われるからです。その都 度中州の草木やアシが取り除かれ、河原に生 き物の気配がありません。あれ程飛来したカ モも昨年は700羽を切り、酒匂川を彩って来 た夏鳥の囀りも今はほんの僅かに聞かれるだけ です。地球規模の天候の変化の前に、河川の 管理は人的被害を食い止める洪水対策に重き が置かれるようになりました。しかし営々と命 を繋いできた生き物の存在も忘れてはなりませ ん。人と生き物が共に暮らせる河川環境が蘇ることを切に願っています。