2016年6月30日木曜日

多摩川河口定例会は終わりにします 


支部幹事 林庭 弘征


 橋本政権時代に決まり、誰もが喜んだ普天間飛行場「返還」のニュース。それがいつのまにか「移設」になり、しかもそれが、貴重な海の自然を破壊する辺野古の埋め立て。これはあくまでも私の私見ですが、この国の政府には失望を通り越して呆れています。
 多摩川河口の連絡道路計画も、民意を一度も問うこともないままに「環境への影響に配慮しつつ」などと言いながら、本当に配慮したならあり得ない架橋計画を見ると、見事に辺野古のやりかたに被ります。沖縄には海の自然を守る民意と、それを礎にした揺るがない知事がいますが、川崎ではどうなのでしょう。市民に知らせる前に始めてしまおう、という建設推進派の意図も感じられま
す。
 「粛々と」進むコンクリート政治。この国の役人たちが思い描く未来図には、豊かな自然とか生態系といった発想は微塵もなく、まるでかつてSL 時代の小学生が描いていたような、高架上の超特急やモノレール、高層ビルの間を縫うように走る高速道路、といった未来の都会図そのものに見えます。小学生の絵の中には緑も見られますが、多くはコンクリートの町並みを彩る程度の街路樹や花壇です。花は園芸種、生きものはペットで満足してしまう人たちは、この子らと同じで根本的に自然を捉えられていません。

 ・・・・・・というわけで、工事が始められる以上、四季の自然を見つめてきた河口定例会は終わりにします。私たちは鳥を見に行くのではなく自然の中に鳥を探してきました。その自然がなくなったら、もう見るものがありません。自然が壊される過程を観察するのは別の人たちにお任せしたいと思います。
 河口で定例会を、という前支部長の浜口さんたっての強い希望に応えて08 年7 月に始めた定例会でした。8年間で終了となりますが、こちらにも意地があり、多摩川河口定例探鳥会は、「一定の役割は果たした」と発展的解消とし、さらに広域の自然を探ってゆく湾岸定例探鳥会として生まれ変わります。 
 探索範囲は、千葉、東京を含む川崎市、横浜市、三浦半島の湾岸域。毎月、場所を変えながら、今度は第4日曜ではなく、会にリクエストの多い土曜日にし、第4土曜日の開催を考えています。神奈川支部には毎月場所を変えながら開催している県央地区の定例会があるので、それに倣って、神奈川県の東側バージョンとしてのバランスも取れれば、と考えています。

 また、この会では新たにスタッフも募集します。リーダーという呼称は多くの方に勘違いされているのですが、決してベテランである必要はありません。鳥を見つけるのがリーダー。これがまず誤りで、参加者全員で探すから「探鳥会」なんです。見せてもらうプロのツアーとは根本が違います。見つけられなくても、名前が判らなくても、参加者の観察をフォローしていただく役割は様々にありま
す。話し相手、交通整理、初心者のほうが良い場合もあるくらいです。毎月の参加義務もなく、スタッフを8名前後登録しておき、各月はそのうちの4名ほどが揃えば、と構想しています。入会して2年目で推薦された某さんも、今では一端の幹事です。熱意が肝心、探鳥会スタッフならではの手応えや楽しみもあります。ぜひ手を挙げてください。


 多摩川河口探鳥会では今まで94 種の野鳥が記録されました。絶滅危惧種も11 種、1回の最多観察記録は48 種、2万羽を超えるスズガモの群れが見られたこともあります。思わぬ種の出現に興奮したことも何度かありました。今後の湾岸定例会でも、東京湾の豊かさをさらに体感できるような会を目指していきたいと思っています。